建設現場では、多くの場合、現場にいる職人や作業員と遠隔地にいる監督者や管理者がコミュニケーションを取りながら作業を進める必要があります。しかし、遠隔地にいる場合、現場の状況を正確に把握することが難しいことがあります。そこで、最近ではスマートフォンやタブレットなどのデバイスによるアプリの活用が進んでいます。これらのアプリを使うことで、現場にいながらも遠隔地の管理者や監督者がリアルタイムで現場の様子を確認したり、職人や作業員とコミュニケーションを取ったりすることが可能になります。本コラムでは、建設現場における「遠隔臨場」の課題とアプリの活用方法について探っていきます。
遠隔臨場とは、建設現場などの現場と遠隔地の管理者や監督者が、リアルタイムでコミュニケーションを取りながら作業を進めることを指します。
●具体的には
主に、監視カメラやセンサーなどの情報収集機器を現場に設置し、それらの情報を遠隔地の管理者や監督者が確認することで、現場の状況を正確に把握し、遠隔地から指示を出したり、問題があれば現場とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら解決することができます。
●2020年度から建設現場の「遠隔臨場」の試行から始まる
国土交通省では以前から、公共工事への遠隔臨場の導入をめざして来ました。2020年5月には令和2年度における遠隔臨場の試行方針を発表しています。2020年3月発表時よりも機器に求められる仕様が軽減されており、導入がしやすくなり、民間企業でも遠隔臨場が導入されている例が増えています。
●国が推し進める背景
遠隔臨場システムを国が推し進める理由として、主に3つの背景があると考えられます。
・建設現場におけるICT化の推進
・コロナ渦におけるビジネスの変化
・人的・時間的コストの軽減
建設現場の遠隔臨場においてアプリを活用する方法には、以下のような方法があります。
1.ビデオ会議アプリの活用
現場で撮影した映像を、ビデオ会議アプリを利用して遠隔の管理者や顧客に共有することができます。また、遠隔からリアルタイムでビデオ通話を行い、指示を出したり、進捗状況を確認したりすることができます。
2.オンラインストレージの活用
現場で撮影した写真や動画をオンラインストレージにアップロードし、遠隔からでもアクセスできるようにすることができます。また、オンラインストレージには、バージョン管理機能がある場合があり、進捗状況の管理に役立ちます。
3.リアルタイムセンサーモニタリングの活用
建設現場には、さまざまなセンサーが設置されており、そのデータをリアルタイムでモニタリングすることができます。遠隔からセンサーのデータを監視し、異常があればすぐに対応することができます。
4.プロジェクトマネジメントツールの活用
プロジェクトマネジメントツールを利用することで、遠隔から現場の進捗状況を確認したり、タスクの割り当てや進捗管理を行ったりすることができます。複数のメンバーが参加している場合でも、タスクの進捗状況を共有することができます。
これらのアプリの活用によって、遠隔からでも建設現場の状況を把握し、現場管理を効率的に行うことができます。
建設現場の遠隔臨場にアプリを活用すると多くのメリットがあります。主に以下のような点が挙げられます。
【コミュニケーションの迅速化と正確性の向上】
アプリを利用することで、現場と遠隔地との間でリアルタイムでコミュニケーションを取ることができ、指示のやりとりや問題の解決がスムーズに行えます。また、情報の共有が容易になることで、現場の状況を正確に把握することができます。
【生産性の向上】
遠隔臨場により、監督者や管理者が現場に出向かなくても作業の進捗状況を把握し、指示を出すことができるため、現場の待ち時間や無駄な作業を減らすことができ、生産性が向上します。
【人出不足の解消】
超高齢化社会が問題になっている日本ですが、建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに減り続け、20年で約27%減少しています。ベテラン職人にはIT導入に理解を得られないことも多いですが、これからの時代はITが身近な若手が遠隔臨場やアプリを使うことにより、現場の働き方環境の改善につながるうえ、人材確保も見込めるでしょう。
一方、遠隔臨場にアプリを活用する課題は、以下のような点があります。
【インフラストラクチャーの整備】
遠隔臨場に必要な通信環境や監視機器などのインフラストラクチャーを整備する必要があります。また、トンネルや山間部など電波が届きにくいエリアでは、安定した通信環境が整わず情報の遅延や途切れが発生することがあります。
【セキュリティの確保】
リアルタイムで情報を共有するシステムであるため、情報漏洩や不正アクセスによるセキュリティの問題が起こる可能性があります。セキュリティ対策の強化が求められます。
【従業員のトレーニング】
遠隔臨場にアプリを導入する場合、従業員に対するトレーニングが必要となります。アプリの使い方や運用ルールなどを理解することが必要です。
【機器導入のコスト】
遠隔臨場システムの導入には、必要になるカメラや録音機器を導入するためのコストが発生します。アプリも同様、リースやレンタルであっても金銭的に負担になることでしょう。
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